【第2回】イベント産業の今

2026年6月18日
目次
ちゃんとイベントプランニングの「ビジョン」
こんにちは、「イベントlab.」管理人のイシダです。
このコラムでは、イベントを科学し、研究することで、業界のさらなる発展と次代を担う人材育成に繋がる本質的な発信を続けています。
2回目となる今回は、私たちイベントプランニング事業部が掲げる「ビジョン(目指す姿)」をテーマに、今まさに私たちが立っている「イベント産業」の現在地とその劇的な変化についてお話ししたいと思います。
私たちのビジョンは、非常にシンプルですが、深い決意を込めた3つの言葉で構成されています。
- イベントを開催する人を増やす
- イベントをつくる人を増やす
- イベントに参加する人を増やす
なぜ今、私たちは「増やす」ことにこだわるのか。その背景には、これまでの「広告業界の一部」という古い定義では語きれなくなった、イベントの爆発的な価値の拡大があります。

広告業界の10年: デジタル過半数時代の到来
イベント産業は長らく、広告統計において「プロモーションメディア(販売促進)」の一角としてカテゴライズされてきました。しかし、広告業界そのものがこの10年で経験したパラダイムシフトは、イベントの「在り方」を根本から変えてしまいました。
ここで、株式会社電通が毎年発表している統計資料「日本の広告費」※を基に、過去10年間の媒体構成比の変遷を振り返ってみましょう。

※注:電通「日本の広告費」における「プロモーションメディア」カテゴリーには、イベント・展示会のほか、屋外・交通広告やDM等が含まれます。
10年前の2015年。世の中はまだ、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌の「マスコミ四媒体」が全広告費の45.4%と、半数近くを占める時代でした。当時のイベントは、これら大衆メディアで認知された商品を「実際に手に取らせる」ための、いわば「認知の補助役」としての位置づけが強かったと言えます。
しかし、2020年にはインターネット広告(36.2%)がマスコミ四媒体(36.6%)と肩を並べ、そして直近の2025年、インターネット広告はついに50%を超える圧倒的な支配力を持つに至りました。
この変化が意味するのは、単なる「媒体の主役交代」ではありません。
情報がデジタルで効率よく、大量に、パーソナライズされて届くようになった結果、「情報の希少価値」が失われたのです。
逆説的な進化: なぜ今、「リアル」が求められるのか
皮肉なことに、スマホの中ですべてが完結するようになればなるほど、人々の心には「デジタルでは埋められない空白」が生まれました。
2020年のコロナ禍、私たちは物理的な接触を断たれ、イベント産業は存続の危機に直面しました。しかし、この「強制的な断絶」こそがイベントの本質を再定義するきっかけとなりました。
2022年以降のリアルイベントの復活は単なる「元通り」ではありません。デジタル広告が「広さ(リーチ)」と「効率」を追求し続けた結果、人々が渇望したのは同じ空間で、同じ熱量を共有する「代替不可な体験価値」だったのです。
かつては「販促の補助」だったイベントは、今や「デジタルで溢れかえった世界において、唯一、確実に人の心を動かし、記憶に刻むことができる聖域」へと進化したのです。
多角化するイベント: もはや「宣伝」だけではない
イベントの役割が変化したことで、その活用領域も驚くほど多角化しています。現代のイベントは、単に「モノを売るための手段」ではありません。
- セールスプロモーション: 集客や認知向上(展示会・ポップアップ)
- ビジネスマッチング: 新たな経済圏を創る(カンファレンス・ネットワーキング)
- HR(人材開発): 組織の一致団結を創る(研修・チームビルディング)
- CSR・啓盟: 社会課題への共感を生む(環境イベント・原体験イベント)
- インナーブランディング: 社員の誇りを醸成する(周年記念・表彰式)
- 地方創生・インバウンド: 地域の魅力を世界に届ける(観光PR・祭り)

このように、イベントは経営のあらゆる課題を解決する「プラットフォーム」へと姿を変えています。これを単に「広告の一部」と呼ぶのは、もはや実態にそぐわないと言わざるを得ません。
私たちは「体験価値創造産業」という、より自立した、大きな社会的意義を持つ領域に踏み出しているのです。
「大企業の特権」から「全企業の戦略」へ
もう一つの大きな変化は、イベントの「民主化」です。
かつて、大規模なイベントは莫大な予算を持つ大企業の専売特許でした。1970年の大阪万博以降、日本のイベント産業は確かに大企業中心に発展してきました。しかし現在はどうでしょう。中小企業やスタートアップ企業こそ、イベントを「生存戦略」として鮮やかに活用しています。なぜか。それは、ブランドの規模で勝てなくても、「熱狂的なファンとの繋がり」さえあれば、企業は成長できると知っているからです。
時代は「モノ(所有)」から「コト(体験)」へ。そして今、「コト(体験)」から「ヒト(繋がり)」へと価値観の軸足が移っています。
たった100人の参加者であっても、その人たちがイベントを通じて企業の「思想」に触れ、翌日から「伝道師」のように周りに語り始める。この「ヒトとヒトの繋がり」が生むインパクトは、数百万回再生されるネット広告の数字を、質的な意味で遥かに凌駕することがあるのです。
まとめ: 私たちが「増やす」と誓う未来
私たちのビジョンである「開催する人」「つくる人」「参加する人」を増やすということは、一言で言えば「イベント産業の在り方をアップデートし、社会の体温を上げること」です。
イベントは「コスト」ではなく「投資」であり、「宣伝」ではなく「経営戦略の核」である。この事実を「ちゃんと」世の中に発信していくことで、イベントに関わるすべての人が誇りを持せる環境を創りたい。
私たちは、単に「イベント屋」を増やしたいのではありません。デジタル全盛の時代だからこそ、リアルな体験を通じて人の心を揺さぶり、社会にポジティブな行動変容を起こす「イベントをつくる人(イベント・クリエイター)」を増やしたいのです。
イベントには、未来を変える力があります。これからも「イベントlab.」は、その可能性を信じ、皆さまと共に研究を続けてしていきます。
ちゃんとイベントプランニング事業責任者/ちゃんとイベントlab.管理人
C.Ishida

